嫌いになりたい




「んー!楽しかった!」


火照りをとるにはちょうどいいのかもしれない。
思いきり吐いた白く濃い息は、いくつも姿を現しては夜空に消えていく。


「ほんっと!あんないい部屋だなんて思わなかった~!」

「しかもたくさんサービスしてくれたし!」

「ケーキ美味しかった~!あと、店長カッコよかったし!」

「苑実ありがとー!」

「どういたしまして~!」


わかりやすいドヤ顔と共に腰に手を当てる。
揃いも揃って拍手をするけれど、今日の一番の主役はゼミ生の理絵だっていうのに。
だけど、本人を含め全員が楽しそうだから空気を読まない発言は無用だ。


「素敵な誕生日になったよ、ありがとみんな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ~!サプライズ大成功!」

「今日のことを忘れないかわりにあいつのことを忘れます!」

「そうだそうだ!もっといい男が現れる!」

「だよねだよね!誰か合コンセッティングして!」


早速肉食を発揮するゼミ生・理絵。
元気だなあと思いつつ、上手く気持ちの切り替えが出来ていることに少なからず胸を撫で下ろす。

大丈夫。
今の彼女の笑顔は正真正銘、本物だ。

女が8人も揃えばガールズトークの大半は男の話。
クリスマス間近でフラれた理絵を励ます目的もあったこの会は大成功だった。
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