嫌いになりたい

「さぁ、このあとどうする?」


いつまでも店の前で騒いでいたら迷惑だなと思った矢先、今回の幹事・苑実が仕切り直してくれる。


「二次会行こうー!」

「行く~!明日は休み!しばらく休み!」

「まだまだ飲める!」

「よし!行くぞ!」


苑実が拳を空に突き出すと、私を除く全員がそれに倣う。

どうしてこうもお酒に強い人ばかり集まったのだろう。
古河ゼミは摩訶不思議だ。(先生は下戸なのに)


「あ~、ごめん、私明日朝からバイトだから帰るわ~」

「はあ!?ゼミ長、空気読んでよ!」

「だって、明日バイト予定だった子、おじいちゃん亡くなったから地元に帰らなきゃいけなくなって」

「この楽しい時期になんて気の毒な……」

「で、茗がヘルプ?」

「そ」

「そういうことなら文句言えない……」


1分前までの勢いはどこへやら。
渋々身を引く7人は息が揃いすぎて傍から見ていて実に面白い。
少しだけ、ほんの少しだけ江藤さんを恨みたくなる。(不謹慎だけど)

だけど、別にこれが最後じゃないし、イベントや打ち上げ、誕生日、事あるごとに集まる古河ゼミだから、どうせ年明けにはすぐに新年会がある。
暗黙の了解の楽しみだ。
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