涙に溺れてしまう前に。

「あー、はいはい。なつと同クラなりたいよー」



「わっ、何その棒読みぃ!」



「あははっ!もう、なつってばそんなに私と同クラなりたいの?」



「そりゃもちろん!ゆゆはなつのヒーローだもんっ」



"ヒーロー"か。



懐かしいな。



「あー!1年生いっぱいいるよぉ」



なつの視線の先に目をやると、少し大きめな制服に身を包み、どこか落ち着



かない様子で周りを見回す新入生。



そうだ、もう。



「…2年生、か。」



自分に言い聞かせるように、意味も無く呟いた言葉は誰に聞かれることも無



く、桜吹雪へと消えていった。


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