涙に溺れてしまう前に。

「なつ」



「ん?なにぃ?」



視線は逸らさずに、声だけを隣にかける。



きっとまた大きな瞳をこちらに向けているんだろう。



「今年も、よろしくね」



「ふふっ、こちらこそ」



私たちの掟。



それは春を迎える度に、新たな挨拶をすること。



心洗われるような感覚に、存分浸る。



この挨拶が、1年の始まりの合図。



「よし、行こっか」



「うんっ」












私たちの、1年が始まる。















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