涙に溺れてしまう前に。
「でもさぁ、」
「…?」
「離れる分だけ、知らないことも多くなるよね」
なつの、この瞬間が苦手。
ふっといつもの空気が去って、本当のなつが顔を出す。
伸びない語尾が、確かな証拠。
どう返すのが正しいのか諮りきれず、口をつぐんでしまった私に、なつは最
初から答えなど求めていないように表情を変えた。
いつもどおりの、’’早苗夏々羽’’に。
「ふふっ、ゆゆー、クラスは離れちゃったけど今日も二人で帰ろぉねぇ」
そんななつに対して、いつも私は。
「うん、いいよ」
傍にいてあげることくらいしかできない。