私が彼を好きな理由。


馬鹿だな。


心の中でまたそう思った。


「……知りたくないの?」


意地悪にもう一度口を開く。

彼は何かを鎮めるようにマグカップを机に置いた。

それは明らかな拒否反応。


「……ソウタ」

「………いい」

「今日、ソウタの………っん」


そこまで言って、唇を塞がれた。


それ以上言うな。
そんな意思が込められている行動に、ぐっと喉の奥が熱くなる。

力の抜けた手からそっとカップが取り上げられて、彼が自分のカップと並べるように机の上に置いた。


「それ以上聞きたくない」


一瞬だけ唇が離れ、磁石のようにもう一度重なる。

唇を割り侵入してきた舌は、さっき飲んだコーヒーよりも熱い気がした。


「…っはぁ」


長い間そうしていた気がする。

気がつくと座っていたソファに押し倒され、着ていたブラウスのボタンが上から3つほど外されていた。


重なり続ける唇に、血中の酸素が薄くなって頭がぼーっとすると、唇の間から空気を取り込もうと身をよじる。

けれど彼はそれを許さず、唇の間を埋めるようにして私を追い詰めた。



そのまま行為が進むと、いつしか彼は私の奥深くにその身を沈めた。

反射的に背中が反り上がり、腰が浮く。


私の身体は彼が聞きたくないと言った、あの2時間ほど前の出来事もあって、さすがにちょっと疲れていた。

だけどすぐ、彼のあの馬鹿な口癖を思い出して、私の頭に響いた。


部屋をいっぱいにして彼が私を揺さぶり、堪えた声が漏れる。

私は今日2度目となるそれを受け入れた。

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