私が彼を好きな理由。
彼は好きだ。
私の長い黒髪が好きだ。
白い肌が好きだ。
華奢で弱そうな私を、
私の全てを彼は好きだと言った。
「……レイは優しいね」
彼は自分の見えないところで、私が何をしているのかきっと知っている。
なのにその上で、それでも私を好きだと言う。
私も好きだ。
そんな彼のことが好きだ。
だけどそれは外見でもなく中身でもない。
冷たいコンクリートの上で、私が何をしているのか知った上で、外で2時間も待っていてくれることでもない。
わざわざ手帳を忘れたふりして、男に会う口実を作ってくれることでもない。
彼はなぜ、こうなる事を知っていながら、この男の元に私を誘うのか。
それはきっと彼が、
私が彼を好きな理由を知っているからだ。
その理由がなくなると、
私が離れていくと知っているからだ。
私が彼を好きな理由。
それはただ一つ。
彼がこの男の、弟だから。
ただ、それだけだ。
-END-