【完結】セ・ン・セ・イ
「センセーだって、――大学、あるじゃない」

「俺、単位余裕だからいつでもサボれる」

「……いつまでも無職じゃ」

「ハンバーガーならいつでも奢ってやれるけど?」


素直に「はい」って言ってくれればいいのに、今度は俺を『暇人』じゃなくしたいのか。

大学よりもバイトよりも、お前を優先すると言ったら迷惑か?


「新しい生徒……」

「もうやらない」

「えっ!?」

家庭教師の話になった途端にきっぱりと言い切った俺に、朱莉は目を丸くして見せる。


「家庭教師は、もうやらない。お前が、最初で最後」

「なんで……」

困ったように目を泳がせる彼女の様子には、お門違いの自責の念が滲んでいた。

ああ、どうにも上手く伝わらない。


「なんでかな」

もどかしいのに、また、思わず笑いが漏れた。


「もう、お前でお腹いっぱいだから。新しい生徒とか、もういらない」

「な……何それ」


ぱちぱちと目を瞬かせる彼女は、意味なんか分かってないんだろう。

それでいい。

俺の気持ちを押し付けて、余計に困らせるつもりはないから。


「俺はキャパがちっせーからな。他の客なんか受け入れたら船が沈んじまう」

「お、重たい客、降ろせばいいじゃない」

「馬鹿。途中下船なんかさせねえよ。……って、さっき母さんが言ってたろ」

「そ、それとこれとは!」
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