【完結】セ・ン・セ・イ
「へぇ、そいつは問題児だな」

昼休みの学食で、一緒に教職課程を取っている友人が面白そうにニヤついた顔でそう言った。

「お前、何でそんなに嬉しそうなんだよ」

ちょっとはこっちの身にもなりやがれ。

学食の生姜焼き定食を突きながら、ジロリと友人――白石裕也を睨む。


裕也は塾講師のアルバイトで、中学生に英語を教えている。

個別指導ではなくて、10人程度の編成のクラスを3つほど受け持っていると聞いていた。

「お前が受け持ってるクラスにはそういう生徒いねぇの?」

「つーか、俺はあんま個人に深入りしてねえし」

クーラーの効いた学食だが、熱々のラーメンを勢いよくすする裕也は汗だくだ。

「大人数の方がその点楽かもねー。お前は選択ミスったな」

中学生の方が勉強の難易度も遥かに低いし、大学受験より高校受験の方が責任も遥かに軽い、と、裕也は指折り数えながら指摘する。


話ながらとは到底思えないハイペースでラーメンを平らげスープまで飲み干すのを見て、その液体がこれから全部汗になって出てくるかと思うと他人事ながら顔が引きつった。


「で?」

と、相変わらずニヤけた顔から発せられた何やら意味深な問いかけに怪訝に顔をしかめれば、

「その問題児ちゃん、可愛い?」

――およそ教員を目指す人とは思えない質問が飛んできて俺は目を剥いた。
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