【完結】セ・ン・セ・イ
「馬鹿かお前、生徒だぞ」

「ったって、2個下なんてテリトリー内でしょ。お前、教師は聖職ってマジで思ってる?」

――思ってるさ。

そう答えるのも馬鹿らしくなって、残りの生姜焼きを米に載せると一気に掻きこむ。

「あのね、俺たちまだ教師じゃないの。立場上先生って呼ばれてるだけで、ただのアルバイトよ」

まるで俺が間違っているとでも言いたげな口調で、裕也の演説はその間も続いた。

「危ないよねぇー、女子高生と2人っきりで授業とか。しかも問題児?俺ならお仕置きとか言って押し倒しちゃうな」

呆れて物も言えないとはこのことだ。

瀬戸朱莉にそんな気を起こしたことは、ただの一度もない。


蔑んだ一瞥をくれてやると裕也は慌てて冗談だよと取り繕ったが、本心は分からない。

コイツが家庭教師じゃなく集団塾の講師で本当に良かったと、会ったこともないヤツの生徒のために本気で思った。


だが――、言われて改めて考えてしまえば、瀬戸朱莉は確かに、可愛い。

たった2つの年齢差は、教師と生徒という枠組みよりも、男と女という枠組みの方がしっくりと当てはまってしまった。


「おお? 隼人、おかしな気起きちゃった?」

「馬鹿言うな。俺の教師人生の第一歩をつまらねえ妄想で汚すんじゃねえ」


俺がどんなに教師らしくなかろうと、彼女がどんな美少女だろうと、間違いを起こす気は毛頭ない。
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