【完結】セ・ン・セ・イ
『馬鹿、そんなんじゃ全然安心できねえし』

『だって、センセーが。遠くに行っちゃうって』

『それで泣くのかよ。今までずっと連絡してこなかったくせに』

『……心配、かけるようなこと、言えないから』

『辛いときに頼れないなら、遠くにいるのと一緒だよね。必要なかった?』

『そうじゃない!』

『俺結構待ってたけど』

『……』

『連絡来ないから、もう大丈夫なのかなって』

『だから、それは』

『俺はもう必要ないかなって』

『それで……遠くに行っちゃうの……?』

『違――あ、いや。それもあるか。ここに留まる理由が1個減った、て意味で』

『じゃあ!』

『行くよ、俺は』

『……何でよ』

『電話もメールも繋がるけど。遠くにいたら、頼れない?』

『……泣き言でも愚痴でもいいの?』

『それでお前の気が楽になるなら』

『でもセンセーが』

『分かってる?』

『え?』

『俺ずっと待ってたんだけど。そういうの、ずっと』

『――いいの?』

『いいよ。どうせ向こう行ったら誰も連絡してこないし、お前の専用回線だな』

『う……わ。なんか、それ……』

『別に、他意はないけど』

『ずる! 何その小馬鹿にしたような笑い』

『――だからもう、待たせんなよ』

『……時差とか、気にしないんだから』

『いいよ別に。遠くに行っちゃう俺が悪いんだから』

『行くんだ、やっぱ』

『淋しいんだ?』

『ッ! べ、別に』

『朱莉』

『……はい』

『今度は朱莉が待っててよ』

『え』

『2年って。長すぎる?』

『セン、セー』

『帰ってきた時、待ってる人がいなかったら淋しいわ俺は』

『お、お帰りくらい言ってあげるわよ』

『じゃ、安心して旅立てるな』

『2年過ぎたら忘れてやるんだから』

『忘れる暇ないくらいそっちから連絡してくるんじゃないの?』

『ば、馬っ鹿じゃないの!?』

『ふ、確かに。泣き言がそんなに頻繁だったら困るね』

『そんなに泣かないわよ!』

『え、じゃあ連絡してこないの?』

『……なんの、連絡』

『なんの、か。……定期連絡?』

『ぷっ、何ソレ!』

『ね、朱莉』

『うん?』

『行ってらっしゃいも言ってくれる?』

『……センセー』
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