【完結】セ・ン・セ・イ
「残念だわ、隼人」

「はあ? 何がだよ」


首に絡みついてきた裕也の腕を振り払いながら、懐かしさに駆られる。

こいつとはいつもこうだった。

人生を歩くペースが2年ずれても、変わらない関係。


「崇高な夢のために海外に渡ったって言うのにこの結果だよ!」

「っせえなあ、もう飽きたよその話題! あの頃の夢貫いてみせた木嶋ならともかく、お前にだけは言われたくないわ」

「本当に残念よ、進藤くん。ぶん殴ってやろうかと思ったわ」

ね、と隣の朱莉に同意を求める木嶋には、さすがに言い返す言葉もない。

「夢に向かって送り出した方の気持ちはねえー」

「ねえー!」

手を取り合って頷き合っている2人に、ため息まじりの苦笑。

この先もずっと、顔合わせるたびにこのネタで弄られるんだろう。


「仕方ねえだろ。――もっとやりたいこと、見付けちまったんだから」

「うわ何かカッコつけてる!」

「開き直り? サイテー!」


最低、じゃねえ。
結局笑いの種にされんだろ、分かってるよ。


教員採用試験に受かったのは俺じゃなくて何故か朱莉で、俺はと言えば、なんと試験を受けてすらいない。

2年でコロリと目指す方向を変えて戻ってきた俺に、そん時は親も周りも目くじら立てたさ。


でも。


「まあ、2年無駄にして帰ってきたんなら許さないとこだったけどね」


――本当は今では、ちゃんと分かってくれている。
< 141 / 147 >

この作品をシェア

pagetop