【完結】セ・ン・セ・イ
降って湧いたその小さな疑問に答えを出す間もなく、家庭教師に向かう時間が訪れた。
瀬戸家に着けばいつものように朱莉の部屋へ直行ではなく、一旦リビングに通される。
先ほどの電話の件を先に話し合おうというわけだ。
「え――授業の回数を?」
「ええ、夏休み中、もう少し増やしていただきたいんです」
これ以上増やしたところで、実質俺が教えていることはほとんどない。
問題を与えて解答をチェックすればほとんど正解していて、自分の存在意義を疑うほどだ。
まだ学校の授業で習っていない範囲についても、軽く説明しただけで彼女は簡単に理解してしまう。
「あの……現状で十分に足りているように思いますが」
俺自身が休み中の都合が付かないという訳でもないが、この要求はどうにも解せない。
だが、例のごとく足音を立てずにいつの間にか2階から降りてきた朱莉が母親の隣に腰を下ろすと、すぐに説明が追加された。
「私がお願いしたんです。先生の教え方が、とっても分かりやすいものだから」
久しぶりに見る猫被りの彼女だ。
母親は困ったような苦笑を浮かべると、申し訳なさそうに補足する。
「期末試験を見るとかなり良い成果が出ているようなんです。だけど1学期の成績はまだ……」
そうか、もう通知表が出たのかと、その言葉で少しだが合点がいった。
瀬戸家に着けばいつものように朱莉の部屋へ直行ではなく、一旦リビングに通される。
先ほどの電話の件を先に話し合おうというわけだ。
「え――授業の回数を?」
「ええ、夏休み中、もう少し増やしていただきたいんです」
これ以上増やしたところで、実質俺が教えていることはほとんどない。
問題を与えて解答をチェックすればほとんど正解していて、自分の存在意義を疑うほどだ。
まだ学校の授業で習っていない範囲についても、軽く説明しただけで彼女は簡単に理解してしまう。
「あの……現状で十分に足りているように思いますが」
俺自身が休み中の都合が付かないという訳でもないが、この要求はどうにも解せない。
だが、例のごとく足音を立てずにいつの間にか2階から降りてきた朱莉が母親の隣に腰を下ろすと、すぐに説明が追加された。
「私がお願いしたんです。先生の教え方が、とっても分かりやすいものだから」
久しぶりに見る猫被りの彼女だ。
母親は困ったような苦笑を浮かべると、申し訳なさそうに補足する。
「期末試験を見るとかなり良い成果が出ているようなんです。だけど1学期の成績はまだ……」
そうか、もう通知表が出たのかと、その言葉で少しだが合点がいった。