【完結】セ・ン・セ・イ
「夏休みは来週からでしたよね? もう通知表が?」

俺の高校では終業式に受け取っていた気がするが、私立ではその辺の仕組みが違うのかもしれない。

「先生にも見ていただきましょうね」

母のその言葉に、朱莉は気まずそうに顔をしかめた。


「ごめんなさい。せっかく教えていただいているのにこんな成績で、恥ずかしいです」

神妙な顔つきでそんなことを言っているが、演技なのは分かり切っている。

それでも、親の前で面の皮を剥ぐような真似はさすがに可哀相な気がして出来なかった。

かと言ってフォローをしてやる気も起きないのだが。


「……6、が多いんですね」

10段階評価なのだという事はすぐに分かった。

真ん中狙いなのか、見事に5と6で揃えている。

期末試験の80点台が功を成したのか、ひとつだけ英語に付いた7がまるで輝かしく見えた。


数字の評価は何となく予想が付いていたので、それ以上興味はない。

俺は生活態度などについて寄せられている教師からのコメントにサッと目を通した。


『特に問題行動があるというわけではないですが、少々積極性に欠けるようで――』


積極性……ね。

コイツ、学校でも猫被りなんだろうか。


チラリと朱莉を盗み見ると、俺の視線でコメント欄を見られたことに気付いたのか、彼女はつまらなそうにプイと顔を逸らした。
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