【完結】セ・ン・セ・イ
駄目だ、母親の前じゃあ話にならない。
「その件については、朱莉さんと少し話し合ってみますので」
一先ず8月中の時間変更のみを承諾しその場をさっさと切り上げると、渋る朱莉を促して2階へ上がる。
半ば無理やり部屋へ押し込みドアを閉めると同時に、彼女は纏っていた猫を脱いだ。
「ちょっとっ! 乱暴じゃない? センセー」
「あの場でお前の本性バラしても俺は良かったけど?」
何が『ごめんなさい』『恥ずかしい』だ、これっぽっちも思っていないクセに。
非難を込めた目で睨みつけると、朱莉は途端に怯えたように大人しくなって下を向いてしまった。
しまった失言だ、『お前』なんて呼び方を今までしてこなかったのに。
脅すような発言も教師に相応しくない。
こういうのも教育の現場では体罰になるとかならないとか――。
だが一瞬生じた焦りは、幸運にも俯いた彼女には悟られずに済んだ。
「――ありがと」
聞き間違いかと思うくらいのほんの小さな声は――、彼女が、本当に母親に【知られたくない】と思っているのだと俺に教えた。
「あのさ、朱莉ちゃん」
避けてきたが、限界だ。
踏み込まなければ、彼女は何も変わらない。
何が彼女をこうさせているのか、何故彼女はこんなことをしているのか。
俺は、……俺が、助けなければ――教師として。
「その件については、朱莉さんと少し話し合ってみますので」
一先ず8月中の時間変更のみを承諾しその場をさっさと切り上げると、渋る朱莉を促して2階へ上がる。
半ば無理やり部屋へ押し込みドアを閉めると同時に、彼女は纏っていた猫を脱いだ。
「ちょっとっ! 乱暴じゃない? センセー」
「あの場でお前の本性バラしても俺は良かったけど?」
何が『ごめんなさい』『恥ずかしい』だ、これっぽっちも思っていないクセに。
非難を込めた目で睨みつけると、朱莉は途端に怯えたように大人しくなって下を向いてしまった。
しまった失言だ、『お前』なんて呼び方を今までしてこなかったのに。
脅すような発言も教師に相応しくない。
こういうのも教育の現場では体罰になるとかならないとか――。
だが一瞬生じた焦りは、幸運にも俯いた彼女には悟られずに済んだ。
「――ありがと」
聞き間違いかと思うくらいのほんの小さな声は――、彼女が、本当に母親に【知られたくない】と思っているのだと俺に教えた。
「あのさ、朱莉ちゃん」
避けてきたが、限界だ。
踏み込まなければ、彼女は何も変わらない。
何が彼女をこうさせているのか、何故彼女はこんなことをしているのか。
俺は、……俺が、助けなければ――教師として。