【完結】セ・ン・セ・イ
「テストの点は大目に見ても、生活態度はそうはいかない」
肩を掴んで椅子に座らせると、目線を合わせるために俺は彼女の正面に膝立ちになった。
思いの外距離が近くて、彼女との歳の差を考えると偉そうなことを言っている自分が滑稽に思えてくる。
それでも、だ。
「学校でどんな風に過ごしてる? 俺がいつも見ているのとは、随分印象が違うようだけど」
家でも学校でも自分を偽っているのだとしたら、なんて――……
「……先生が知っているのが本当の私かどうかなんて、誰が分かるの?」
思考をぶった切った彼女のその低い声に、俺は反応出来なかった。
「先生、私のこと可哀相って思った? やめてくれる? 同情とか。くだらない」
――なんて可哀相な、と。
確かに俺は、思った。
俺に見せるのが彼女の本来の姿で、外でも、自分の家族にすら、それを見せられずにいるのだと。
俺の、傲慢なのか。
口の端を歪めながら、瀬戸朱莉は嘲るように笑った。
眼鏡の奥の瞳に、彼女の本音は見えない。
「ねえ、夏休み。来てくれるでしょ? そうだな、出来れば毎日がいい」
にこりと笑いながら当然のようにそう言う彼女が、その時の俺には、得体の知れない地球外生物か何かに見えた。
肩を掴んで椅子に座らせると、目線を合わせるために俺は彼女の正面に膝立ちになった。
思いの外距離が近くて、彼女との歳の差を考えると偉そうなことを言っている自分が滑稽に思えてくる。
それでも、だ。
「学校でどんな風に過ごしてる? 俺がいつも見ているのとは、随分印象が違うようだけど」
家でも学校でも自分を偽っているのだとしたら、なんて――……
「……先生が知っているのが本当の私かどうかなんて、誰が分かるの?」
思考をぶった切った彼女のその低い声に、俺は反応出来なかった。
「先生、私のこと可哀相って思った? やめてくれる? 同情とか。くだらない」
――なんて可哀相な、と。
確かに俺は、思った。
俺に見せるのが彼女の本来の姿で、外でも、自分の家族にすら、それを見せられずにいるのだと。
俺の、傲慢なのか。
口の端を歪めながら、瀬戸朱莉は嘲るように笑った。
眼鏡の奥の瞳に、彼女の本音は見えない。
「ねえ、夏休み。来てくれるでしょ? そうだな、出来れば毎日がいい」
にこりと笑いながら当然のようにそう言う彼女が、その時の俺には、得体の知れない地球外生物か何かに見えた。