【完結】セ・ン・セ・イ
こんな苦行が待っていることは承知の上で学校の課題を授業中にやらせているのには、意図があった。

わざわざ俺が面倒見なくても、朱莉はきちんと課題をこなすだろう。

例のごとく【真ん中狙い】で、わざとらしく間違いを挟み込みながら。

俺は、授業という名目でそれを監視し規制することにしたのだ。


事実、8月の1週目にやらせた課題はそれはひどかった。

見事に三分の一から半分程度の分量(その量さえ、科目ごとに正確に計算されているようだった)で間違いを仕込んでくる。

俺は都度事細かにチェックして、やり直しを命じた。

はじめこそわざとらしいバレバレの間違いを堂々と提出してきた朱莉も、次第に諦めたのか徐々に正解する割合が増え――、その代わり、いやに精巧なトラップを仕掛けてくるようになった。

まさに少数精鋭の部隊編成で挑んでくる彼女は、もはや学校の成績で真ん中を狙うよりも、俺を嵌めることに楽しみを見出した様子でさえある。


まあ、別にそれでもいい。

少々歪んだ形ではあるが、わざと真ん中を狙って間違えるよりは正解率という点で随分とマシだし、何にせよ勉強に楽しみを見出せたなら教える側としては本望だ。

――遊ばれているという自覚があったとしても。


要は俺が彼女の罠に引っかからなければ良いだけの話で、……まあ、それが俺の神経をすり減らしているのもまた事実なのだけど。
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