【完結】セ・ン・セ・イ
「本当に毎日来るなんて、センセー結構暇人ね」

「キミね、誰の頼みで来てるか分かってる? ちょっとは言い方を選びなさい」

確かに暇人と思われても仕方ないスケジュールだが、それはお互い様――むしろこっちからしたら、朱莉の方が心配だ。

俺の場合、大学のサークル活動(地味に大学不認可の小規模なフットサルサークルに所属している)やら、県外に進学してちょうど今帰省中の高校時代の友人との集まりなど、午後や夜になればちょこちょこと予定が入っている。

別に家庭教師のバイト以外に何もしていないわけではない。

ちなみに8月の4週目には1週間、裕也のバイト先である塾の夏期講習の臨時講師も入れてあるし、なんだかんだで実は結構忙しい。


対して朱莉はというと、彼女との会話や母親から聞こえてくる話から察するに、午後にどこか外出している様子は全くないのだ。

それを見越しての『第二の条件』が、もうすぐ発動される。


「はぁーッ! 終わったぁ!」

朱莉が大きく伸びをしながら放ったシャーペンが、コロンと机を転がった。

「お、早かったね。さすが」

最後にあがってきた古典のプリントを慎重に一問一問確認して、

「うん、大丈夫。良く頑張りました」

こんな子ども扱いもないだろうと思いながら、それでも自分なりの先生らしさを最大限にイメージしながらそう告げた。

元々実力のある子に対して『頑張りました』という褒め方もどうかと思うが、では他にどんな言葉があるというのだろう。
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