【完結】セ・ン・セ・イ
とにもかくにも、彼女は8月9日という期日から2日前倒しで、『第一の条件』をたった今クリアした。

これで彼女の課題はオール【優】評価間違いなしだ。

2学期の成績にどの程度影響を与えるかは分からないが、少なくとも教師に与える心象は良くなるだろう。


「あーあ、先生のおかげで全問正解しちゃったじゃない。中の中が私のモットーなのに」

ついに包み隠さずに本心を言葉にした朱莉は、不満げに積み上げられた『処理済』の課題の山を一瞥した。

その言葉には必要以上に踏み込まず(チェックにミスがなかったことを彼女がうっかり認めたことにこっそり安堵したのは内緒だ)、俺は当たり障りのない程度のツッコみを入れる。

「わざと間違えるよりも普通に解いた方がずっと楽でしょ」

唇を尖らせて明後日の方向に顔を逸らしながら、それでも彼女は、小さな声で「まあね」と呟いた。


――『中の中』を狙う理由を、今なら聞いても良いのだろうか。

不意に湧きあがった抑えていた欲を、いやまだだ、と自分に言い聞かせながら制御する。

まだ早い。

彼女はまだ、全然手の内を見せていない。


「――じゃ、余った2日はご褒美だ。第二の条件にあてようね」

にこりと笑顔を作ると、「だからそんなん要らないっつーの」と朱莉は顔をしかめて不満を漏らした。
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