【完結】セ・ン・セ・イ
「ほう、体験入学」

午後のサークル活動でメンバーに話を通すと、やはり面白がって食いついてきたのは裕也だった。

「という名目で、引きこもりを外に連れ出す」

「入れ込み過ぎじゃねぇ?」

否定的なことを言いながら嬉しそうなのは多分――

「ま、噂の問題児ちゃんと対面できるのは俺としては楽しみだけど?」

……やっぱり。


第二の条件。

スケジュールを前倒しでこなした場合にも、勉強量は増やさない。

その代わりにご褒美として、課外授業を行う。


朱莉に必要なのは勉強じゃない、だからこの条件を出した。

正直彼女自身が課外授業を望まないのは分かっていたし、それ故にわざと予定通りに(つまりペースダウンして)授業を進めようとする可能性はあったのだが、俺の心配をよそに見事に2日も前倒してくれたわけだ。


明日は彼女の志望校である俺の大学を案内し、昼には学食、午後には俺の所属するフットサルサークルまで連れまわす。


……それが彼女が必要としていることかと問われれば自信はない。

だが、少なくとも夏休み中ずっと引きこもっているよりはマシだろう。

実際に目で見ることで、より大学というものに興味を持てるならなお良い。


効果のほどはやってみなけりゃ分からない――神のみぞ知る、だ。
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