【完結】セ・ン・セ・イ
さっさとその場を逃げ出したかったのは俺だけなのか、結局集合時間ギリギリになってからフットサル場へ。

運動用に速乾性の薄いTシャツとハーフパンツに着替えても、真夏の陽射しは容赦なく襲って来た。


ただでさえ高い気温と湿度に追い討ちかけて運動量が加算されれば、流れ出る汗の量は飲んだスポーツドリンクの量と一致するかもしくは超えるか。

とは言え俺は、今日に限ってはまだプラスアルファ(=運動)を加算していない。

理由はと言えば、

「この暑いのによくもまあ」

……と、ここに来ても日傘を手離そうとしない瀬戸朱莉だ。


日除けになる屋根付きのベンチは、フットサル場の本当に隅の隅にある。

さっさとサークルメンバーに溶け込んで一緒に汗をかいている田澤少年とは対照的にぽつんとそのベンチに座る彼女を、1人放置しておくのも気が引けるというものだ。


「……まあ、フットサルに興味あるとは思ってなかったけど」

ここまであからさまにダルそうにされると、もう苦笑するしかない。


ウェアも靴も貸せるから一緒にやろうという木嶋の誘いもやんわりと断り、他のメンバーから興味津々で話しかけられても無言で愛想笑いを返すだけ(それでも木嶋や裕也との初対面を考えると笑っただけでもマシかも知れないが)の朱莉の周りからは、いつの間にか誰もいなくなってしまっていた。

――俺以外。

従って、付き人よろしく俺も日陰で涼んでいる(というほど涼しくもないが)。


「サークルってもんも見せておこうかと思ったんだがな」

失敗だったか。

雰囲気だけでもと思っていたわけだけど、屋外スポーツなんて、朱莉の選択肢には元々なかったのかも知れないし。


と、俺の心の声が聞こえたのか、はっとしたように彼女の顔が上がった。

「面白いよ、見てて。あ、ルールとか全然知らないけど」

そう言われましてもね。
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