【完結】セ・ン・セ・イ
「ちょっと待って、……それ、いつのこと?」

俺が朱莉の家で爆弾を投下したのはつい昨日のことで、夜になって朱莉からのメールが届き、そして今日、サークル活動の後にファミレスに寄って家庭教師がしばらく休みになったという話をしたのが今だ。

木嶋が彼女と最後にメールをしていたのが昨日のアレの直前なら辻褄も合うが、木嶋の言葉のニュアンスはもう少し前をさしているように聞こえる。


「ん、先週末かなぁ? 夏祭りの後で、日曜は挟まなかったと思うから……土曜の夜?」

返ってきた答えは予想通り、昨日より、もっと前だ。

どういうことだ、先週から様子が変だったというのか?

今回の一件とは、また別の問題なのだろうか。


「何、木嶋も朱莉ちゃんのこと怒らせちゃったの!?」

と、横から裕也が口を挟む。

「別に怒らせたわけじゃねえよ」

「誰が怒らせたって!?」

俺と木嶋の反応が重なって、また近くの席の客たちの視線を集めた。

周りも若い層だけに少しくらい騒いでも文句をつけてくる者はいなかったが、心持ち小さくなって会釈で返す。


「木嶋、それ俺の一件とは無関係だ。詮索する気はないけど……」

差し支えなければ、何があったか教えてくれ、と。

他人の私信を覗き見するなんて褒められたことじゃないのは分かっているが、瀬戸朱莉という人物を紐解く鍵がそこに隠されているかもしれないという僅かな期待を持って頼み込む。


それを、ほんの一拍だけ思案してから木嶋は聞き入れてくれた。
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