【完結】セ・ン・セ・イ
「おねーさん、バニラアイス3つ」
絶妙に空気を読まないタイミングでウェイトレスを呼び止めた裕也に思わず目を剥くと、
「ちょっと、冷静になって整理しようぜ」
青白い顔をした木嶋の頭にぽんと手を乗せて彼は言った。
――その通りだ。
朱莉本人がいないところで俺たちがいくら慌てふためいても、事情が明らかになるわけでも、何か状況が変わるわけでもない。
「……お前、意外と大人だな」
コイツに助けられる時が来るとは。
感心して声に出した言葉はだが裕也のお気には召さなかったようで、頬を引きつらせた苦い笑いが返ってきた。
「隼人こそ、彼女のことになるとちょっと熱くなりすぎじゃねえの?」
仕返しとばかりに意地の悪いジャブが飛んでくる。
確かに、冷静ではなかった。
でもそれは――、
「初めての生徒なんだ。……当たり前だろ」
瀬戸朱莉は、今では確かに俺の中で、簡単には切り捨てられない特別な人物になっていた。
だがそれは、裕也の言葉のニュアンスに含まれるような意味合いを持ったものでは、決してない。
「木嶋、もう大丈夫か」
「うん……。甘いもの食べて、落ち着こう!」
力のない笑いを返す木嶋と、納得のいかないような顔を浮かべた裕也と3人で、運ばれてきたアイスをしばらく無言でつついた。
喉をするりと滑り落ちていくひんやりとした感覚が徐々に頭を冷やし、いつの間にかオーバーヒート気味だった思考回路を落ち着かせていった。
絶妙に空気を読まないタイミングでウェイトレスを呼び止めた裕也に思わず目を剥くと、
「ちょっと、冷静になって整理しようぜ」
青白い顔をした木嶋の頭にぽんと手を乗せて彼は言った。
――その通りだ。
朱莉本人がいないところで俺たちがいくら慌てふためいても、事情が明らかになるわけでも、何か状況が変わるわけでもない。
「……お前、意外と大人だな」
コイツに助けられる時が来るとは。
感心して声に出した言葉はだが裕也のお気には召さなかったようで、頬を引きつらせた苦い笑いが返ってきた。
「隼人こそ、彼女のことになるとちょっと熱くなりすぎじゃねえの?」
仕返しとばかりに意地の悪いジャブが飛んでくる。
確かに、冷静ではなかった。
でもそれは――、
「初めての生徒なんだ。……当たり前だろ」
瀬戸朱莉は、今では確かに俺の中で、簡単には切り捨てられない特別な人物になっていた。
だがそれは、裕也の言葉のニュアンスに含まれるような意味合いを持ったものでは、決してない。
「木嶋、もう大丈夫か」
「うん……。甘いもの食べて、落ち着こう!」
力のない笑いを返す木嶋と、納得のいかないような顔を浮かべた裕也と3人で、運ばれてきたアイスをしばらく無言でつついた。
喉をするりと滑り落ちていくひんやりとした感覚が徐々に頭を冷やし、いつの間にかオーバーヒート気味だった思考回路を落ち着かせていった。