【完結】セ・ン・セ・イ
駅に近づくにつれ街の活気を感じる。
電車に乗る前に喉を潤したくなった。
滅多にやらないことだけど、テイクアウトのコーヒーでも買うかな、と、視線を階段の上のコーヒーショップへ泳がせた、その時。
覚えのある、赤いチェックのスカートを視界に捉えた。
階段を降りてくる色白の足。
白ブラウスとリボンタイまでが視界に入った瞬間、咄嗟に駅ビルの角へ身を潜めた。
階段を降り切った彼女が俺のすぐ横を通り過ぎるその瞬間、見慣れた赤いフレームが、何かを反射して彼女の耳の上で光を放った。
瀬戸朱莉、だ――。
失念していた事実、今日が彼女の始業式で、つまりは午前授業で、可能性としてこの時間帯に駅を利用することは十分に予想できたのだということに俺が漸く思い当たった時、彼女は駅ビルが作る日陰と日向の境目で一瞬立ち止まった。
一瞬気付かれたかと思ったが、そうではなかった。
彼女が鞄に手を入れて折り畳みの傘を取り出したので、学校にまで日傘を差して通っているということに少なからず驚きを覚える。
制服で日傘を差す女子高生など、見たこともない。
だが朱莉は、その傘を開くことなく鞄に戻した。
……何故?
立ち止まったまま俯く彼女に、すれ違う通行人の肩が軽くぶつかった。
謝罪の会釈、らしきものを軽く交わした後に、やっと彼女は動き出した。
陽の当たる外へ、日傘なしで。
電車に乗る前に喉を潤したくなった。
滅多にやらないことだけど、テイクアウトのコーヒーでも買うかな、と、視線を階段の上のコーヒーショップへ泳がせた、その時。
覚えのある、赤いチェックのスカートを視界に捉えた。
階段を降りてくる色白の足。
白ブラウスとリボンタイまでが視界に入った瞬間、咄嗟に駅ビルの角へ身を潜めた。
階段を降り切った彼女が俺のすぐ横を通り過ぎるその瞬間、見慣れた赤いフレームが、何かを反射して彼女の耳の上で光を放った。
瀬戸朱莉、だ――。
失念していた事実、今日が彼女の始業式で、つまりは午前授業で、可能性としてこの時間帯に駅を利用することは十分に予想できたのだということに俺が漸く思い当たった時、彼女は駅ビルが作る日陰と日向の境目で一瞬立ち止まった。
一瞬気付かれたかと思ったが、そうではなかった。
彼女が鞄に手を入れて折り畳みの傘を取り出したので、学校にまで日傘を差して通っているということに少なからず驚きを覚える。
制服で日傘を差す女子高生など、見たこともない。
だが朱莉は、その傘を開くことなく鞄に戻した。
……何故?
立ち止まったまま俯く彼女に、すれ違う通行人の肩が軽くぶつかった。
謝罪の会釈、らしきものを軽く交わした後に、やっと彼女は動き出した。
陽の当たる外へ、日傘なしで。