【完結】セ・ン・セ・イ
『教師は聖職者か否か』

1学期末の試験で瀬戸朱莉が中間よりは少々マシな点数を持ち帰った頃、俺は俺で大学の教職課程のレポートに追われていた。


結論から言えば、俺の中では教職とは聖職である。

担当教科の学習面に限らず生活全般において、教師は生徒に尊敬され道標となる人格者でなければならない。

授業を離れ、クラスを離れ、学校を離れたとしてもその枷は外れない。


プライベートでさえ人の道を外れるようなことをしてはならない(そりゃどんな職業であれ同じことだけど、教師であるならばそれは他の比ではないと俺は思っている)し、常に考えるべきは子どもたちの――生徒の将来だ。

自分という存在が彼らに与える影響を、教職に就いたからには軽んじてはならない。


少なくとも、俺に夢を与えた彼の先生はそういう人物だった。

そして俺はその人を目指していたし、それが教師としての在り方だと信じて疑わない。

疑う余地がない。


「英語――82点。数学、71点」

瀬戸朱莉から渡された期末試験の点数を、俺は声に出して読み上げた。


俺の専門教科である英語を80点にのせてくれたのは、彼女のせめてもの情けなのだろうか。

出題された問題と照らし合わせれば実際には90点を超える実力が彼女にはあり、これまで見てきたところ理数系の頭を持った彼女なら数学においては更に上を行く能力があるはずなのに。
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