ESORA PINK《短》

「さっさと押し倒せばよかったんだよ。姫さんならそれくらい出来るだろ？」

ぼんやりしていると、八智がそんな突拍子もないことを言った。

ふわふわとしていた視線を八智に向けると、その目が冗談を言っているわけではないと語っている。
その真剣さに呆れてしまい、溜め息がもれてしまった。

確かに私は軽く触ったりするのは好きだけれど、誰かを押し倒したことなんて一度もない。

「あんた、私のことどんな女だと思ってるのよ？」

私に対して大きな誤解をしているらしい八智にそう訊ねてみると。

「美人で色っぽくて賢くて、いい女だと思ってるよ」

「あら、ありがとう」

真面目な表情と声でそんな意外な高評価が返ってきたので、反射的にお礼を言ってしまった。

いい男に褒められて気分が上がるのは女の性だろう。

自然と口角が上がってしまった。