ESORA PINK《短》
「……なにしてるの?」

思わず、そう聞いてしまった。

廉が私に膝枕をしてくれて、さらには頭を撫でてくれるなんて、明日は槍でも降るのかもしれない。

本気でそう思ってしまったのだ。

「別に」

一瞬、ビクッと身体を揺らした廉は眉間に皺を寄せて、私の頭から手を離した。

そして不機嫌そうに、起きたなら座れと足を揺する。

不愉快なその振動に、やっぱり寝たフリをしておけばよかったと心底思った。

気持ち良かったのにな、と名残惜しく思いながらも起き上がり、捲れ上がっていたワンピースの裾を整えながら部屋を見回してみる。

部屋の中はいつも通りで、だけどテーブルの端に並べられていた空のボトルはどこかへ消えていた。

多分、八智が片付けてくれたんだろう。

そう考えながら部屋の中をもう一度見回したところで、私は部屋の中に八智の姿がないことに気が付いた。

「ねえ、八智は?」

私は部屋の中に向けていた視線を廉へと集中させた。
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