ESORA PINK《短》
抱き付いた相手は驚いた様子もなく、私を軽く抱き締め返してきた。

相変わらず慣れた男だな、と考えながらその絶妙な力加減と、少し低めの体温を堪能していると。

「姫(ヒメ)さん。こんばんは」

胸に顔を埋めていた私の頭上から、笑いを含んだ声が落ちてきた。

私は仕方なく顔を上げて、約二ヶ月ぶりに会う男と視線を合わせる。

「八智(ヤチ)。こんばんは」

そして八智を真似て挨拶してやると、相変わらずですね、と笑いながら私の頭を撫でてきた。

頭を撫でられながら、お互いにクスクスと笑っていると。

「ねえ姫さん。そんな格好で抱きつかれたら、やりたくなっちゃうんだけど」

八智が笑いながらそんなことを言い出したので、自分がどんな格好をしているのか視線だけでチェックした。
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