ESORA PINK《短》
「お前さ、なんで今日は俺に飲まそうとするわけ?」

ブランデーを少し飲んだあと、廉は不思議そうに首を傾げた。

確かに私は普段、飲みたくない人間に無理矢理飲ませることはしないし、わざわざ勧めたりもしない。

今日の私の行動は確かにイレギュラーなものだ。
廉が私の行動の裏を読もうとするのは当然のことだろう。

「んー、飲みたい気分かなって思って」

だから、私は言葉を選んでそう答えた。

出来るだけ軽く、深い意味を持つ言葉に聞こえないように。

そして横目で廉の顔を盗み見ようとすると、私を見ていた廉と視線が交わってしまった。


「……どういう意味だよ?」

心の奥を探り合うような、一瞬の間。

それを先に破ったのは廉だった。
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