ESORA PINK《短》
04 「好きならしょうがないの」
廉の手が、そっと離された。
握られていた手首を見ると、少し赤くなっている。
まだほんの少し鈍い痛みが残っているけれど、今はそれよりも廉のほうが大事だ。
廉に視線を戻すとその表情は呆然としていて、いつもの頑なな雰囲気が消えていた。
もしかしたら今日限り、廉は私達の前から姿を消すかもしれない。
私が思わずそう考えてしまうくらい、今の廉は弱々しく見えた。
「……だからお前のこと、嫌いなんだよ」
これで廉になにかあったら私の責任だな。
そんな私の小さな不安に気付いているのかいないのか、廉が一番初めに口にしたのはそんな言葉だった。
だけど、それを聞いて私は安堵した。
それはいつも通りの廉の言葉だったから。
「うん。知ってるよ」
思わず溢れ出てしまった笑顔のまま、私もいつも通りの返事をした。