ESORA PINK《短》
「……好き、なんだ。ずっと」

数秒、私をじっと見つめていた廉はふっと視線を逸らす。

そしてなんの前置きもなしに、突然語り始めた。

「渉は俺にないもの全部持ってて。だから、最初は憧れだと思ってた。だけど、中学のときに渉に初めて彼女が出来て……そのときに自分の気持ちに気付いた。
最初はそんな自分が気持ち悪くて認めたくなくて、何人か女と付き合ったこともある。だけど俺の優先順位はいつでも渉が一番で、結局、俺がしたことは女を泣かせただけだった」

廉が自分の感情を吐き出すその横顔は、とても痛々しいものだった。

今まで本当のことを言えなくて、どれだけ苦しんだんだろう。
今までただ好きだというだけで、どれだけ傷付いたんだろう。

少なくとも私にこんなことを話してしまうほどには、我慢していたのだろう。

そして廉の痛みや苦しみは、私がなんとか出来る程度のものじゃない。

なにより廉だって、私になんとかしてほしいとは思っていないはずだ。

ただ、話を聞いてほしかった。
多分、それだけだったんだろう。
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