ESORA PINK《短》
その顔で睨まれるとたいていの人達は怯えてしまうのだけれど、私は全く気にならない。

むしろ私はその表情が好きなので、狙い通りの表情を見せてくれたことに、唇の両端を持ち上げた。

「うるせえな」

緩んでいるであろう私の顔を見てそのことを思い出したのか、廉は顔を背けると投げ捨てるようにそう言った。

本当に、廉は嘘のつけない男だ。


「ごめんごめん。来たってことは、お酒くらい付き合ってくれるんでしょ?」

ばつの悪そうなその顔を見ているのも楽しいけれど、そろそろ切り上げないと本気で拗ねてしまう。

どうせ次に会ったときにはまた同じようなやり取りをするのだから、謝る意味はないのだけれど。

私はドアを大きく開いて、楽しそうに笑っている八智と不機嫌な廉を、家に招き入れた。
< 5 / 40 >

この作品をシェア

pagetop