ESORA PINK《短》
02 「ヤケ酒くらいさせてよ」
「姫さん。これ、どういうこと?」
リビングに入るなり、八智はテーブルを指差しながら目を見開いた。
未開封のボトルが数本。
未使用のグラスが数個。
飲みかけのワイングラスが一脚。
そして空になったワインのボトルが二本、テーブルの上に転がっている。
「なんのこと?」
八智の問いかけが空のボトルに対してだと理解しつつも、そんなトボけた答えを返した。
すると八智が諫めるような視線を向けてきたので、私はそれから逃れるように、さっさとソファに座りクッションを抱く。
そしてちらりと八智に視線を向けたあと、飲みかけのグラスを手にとって、一気に飲み干してやった。
私なりの、今日はとことん飲みます宣言だ。
そんな私に八智は諦めたように一つため息を落とすと、テーブルを挟んで向かい側に座った。