ESORA PINK《短》
「ちょっと廉くん? センパイがお礼を言ってるのに、なにもないわけ?」

微妙な表情でソファの座り心地を楽しんでいる廉に少し意地悪がしたくなって、そんなことを言ってみた。

もちろん、少し距離を詰めることも忘れない。

すると廉はあからさまに嫌な顔をして、それでもソファからは立ち上がらなかった。

本当に、このソファが好きらしい。

廉は眉間に皺を寄せたまま二人がけのソファのギリギリ端に座りなおすと、先ほどテーブルの上の置いた煙草に手を伸ばす。

そしてポケットからジッポを取り出すと煙草に火を付けて、まるで私を遠ざけるように煙を吐いた。


「あんな緩い部活に先輩も後輩もねえだろ。だいたいお前を先輩だと思ったことなんて一度もねえよ」

私が知るなかで、一番煙草が似合う男は廉だな。

そんなことを考えていると、廉は数秒前の会話の続きをはじめた。
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