とけるほど、抱きしめて
タクシーを拾って、

「坂の町⚪︎⚪︎までお願いします。」
「はい。」

走り出すタクシー。

「永嶋…。」
カーブを曲がるとそのまま永嶋の身体が
私の膝の上に落ちる。

何んだか、かわいく思えた。
真っ赤な顔の永嶋…。
本当に好きだったんだね。
マキが辛い時凄く心配してたもんね。
優しいからさ。解るんだ。
でも、私は…。恋愛対象じゃないでしょ
ただの、同僚なんだよね。


自宅に永嶋を連れて行き
部屋のソファーに寝かせた。
厚めのブランケットを掛け

私は着替えを持ってバスルームへ。
シャワーを浴びて出た。

濡れた髪を乾かし、冷蔵庫から
ミネラルウォーターを出すと飲みながら
ソファーの端に座った。
「永嶋?ねぇ?隼? 水飲む?」
「ふぁー。アレ?ここ?」
「私の家だよ…。住所言わないから…。

「悪い。迷惑かけて…。」
私からペットボトルを、受け取り
一気に飲み干す。
「ふぁ〜!げほっ」

「バカ!大丈夫?」タオルを差し出し
背中を撫でた。

「朝霧?…。ありがとう…。」

何か無性に抱きしめたくなった。

「隼…。傷付いたんだね。元気出して
私が側にいるから…。ね。」

「眞子?お前、あったかいよ。」
「シャワー浴びたからね。」
「違うよ。ここが(心)…。
あったかいんだ。」

潤んだ瞳が私を見つめた。

「私…。永嶋の事…好きなのかも…。」
「眞子…。」
触れるだけの唇。
「隼…。」
酔ったからそうだよ…。
「俺…。眞子と話してると癒される。
嫌味もみんな…。あったかいんだよ。」

「なぁ…。俺と恋始めない?」
「隼…?まだ、傷癒えてないから?誰かを変わりにしたいんだよ…」

「そうなのかもしれない。でも、
眞子と居たい。」

ぐっと引き寄せられて
隼の胸に身体が…。今度は、私を愛しく
思ってるって、そんなキスだった。




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