コンプレックスさえも愛されて。
「…あのさぁ」
信号待ちで車が止まった瞬間、頭上に優しい声。
ふと顔を上げると少しだけ困ったような顔をした彬さんが、手を伸ばして私の髪を撫でてくれる。
「あんな事言った俺が悪いのは分かってんだけど、そんなに意識されるとこっちまで緊張してくるっていうか…」
苦笑しつつもそんな風に言った彬さんを見て、私は益々どうしていいか分からなくなってしまう。
「あー、だからさ……勿論、あの時言った言葉は俺の本心だけど、なにも無理矢理ってつもりじゃないし……基本は一緒にいたいだけなんだから、もっといつもみたいに…楽しく、な?」
「…あ、あの……はい…」
ぎこちないながらも私がそっと笑みを浮かべて彬さんを見れば、明らかにホッとしたように、彬さんは笑い返してくれた。
「俺はさ、沙耶香と一日一緒にいられるだけでも嬉しいんだよ。だから、この前のアレは気にしないでいいから……いつも通りに仲良くして?」
彬さんがふざけて、甘えるように口にする。
こんな風に気を遣わせてしまう自分が本当に情けなくて、私はそんな気持ちを隠すように、クスクスと笑った。