チョコレートなんか大嫌いっ
葵ちゃんはまたバタバタと奥に戻っていった。

何故か、待たされている間色々説明してもらった。

短髪の店長さんは爽二さんといって葵ちゃんのお父さんなんだって。
あまりの若さに驚愕してしまった。
まだ20代でこんな大きな子供たちが!?

というのも、本当のお父さんではないのだそうだ。
爽二さんのお兄さんの子供たちだったのだが、夫婦水入らずの旅行中に事故にあって亡くなったんだとか。
それで爽二さんが引き取ったというわけ。
お父さんというより少し年の離れたお兄さんって感じかな。

そして、ミステリアスな彼は葵ちゃんの1つ上のお兄さん。
柊(しゅう)さんというらしい。
のんびりした話し方のせいか物腰が柔らかくて優しいお兄さんだ。

なんだか華やかなキラキラして眩しい家族だな……

『ただいまー』
『おー、おかえり』
『え…?』

振り替えると真っ黒な髪の毛の、身長が私と変わらないくらいのつり目の気の強そうな男の子がいた。

『いらっしゃい』

男の子は口ではいらっしゃいってゆってるけど、顔は全然歓迎していなかった。
そりゃこんな地味な女歓迎したくないよね…

『蓮!笑顔!いつも言ってるだろ』
『ふっ』

爽二さんに言われて不気味な笑顔を浮かべてこちらを見てきた。
笑われてるんだか睨まれてるんだか、よく分からない表情だった。
それがなんだか少し可笑しくて可愛かった。

『な、なに笑ってんだよ!』

笑われたことに顔を真っ赤にして声を荒げる。
そんな彼を爽二さんがガシッと捕まえて嗜めた。

『ごめんな、こいつ愛想が無いんだけど悪い子じゃないんだ。葵の1つ下の弟で、蓮って言うんだ』
『は、はぁ』
『蓮、葵の友達の真紀ちゃんだ』
『葵の?ふーん』
『よろしくぐらい言ったらどうだ?』

そういうと爽二さんは蓮くんをわしゃわしゃと撫で回した。

『もー!やっぱり絶対誰かが盗んでるぅ』
『あ、葵、これっ』

蓮くんが葵ちゃんに向かって黄色い物を投げた。
ぽすっと受けとると葵ちゃんは叫んだ。

『あーーー!蓮が盗んでたのぉ!!』
『忘れてったから届けようとしてやったんだよ!』
『届けてないじゃーん!』
『追い付けなかったんだもん!』

がるるっとまるで獣同士の争いのようだった。
見かねた爽二さんがやめなさいとゲンコツをして戦いに終止符をうった。
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