チョコレートなんか大嫌いっ
良いことがあれば当然悪いこともある。
最早、何が良いことで何が悪いことなのか変な深読みをしてしまう。
悪い事への前準備として、上がって下がった方が効果的に傷つけられるんじゃないか。
そう考えたら良いことが良いことではなく悪いことのように思えてくる。

負のスパイラルに迷いこんでしまったらしい。

『おい、ぶーちゃん!聞いてんのか?』

こんなことを考えながら現実から目を反らそうとしていたが、そうはさせてもらえなかった。
目の前にはあの口を開けばキラリと八重歯が覗く私の天敵深沢拓海が不敵な笑みを浮かべていた。

どうやらサッカー部の朝練後だった深沢拓海に今朝の柊さんとのやり取りを見られていたらしい。
別に私が誰と何をしていようがどうだっていいはずなのに。

深沢拓海とぶつかってから、取り巻きたちにはずっとからかわれてきたが本人に捕まったのは高校生活初めての出来事かもしれない。

『お前みたいなデブがなに意気がってんだよ』
『……』

この文言には聞き覚えがあった。
小さい頃、散々言われてきた言葉だった。
泣いてしまいそうになるのをグッとこらえる。
それが私に出来る唯一の抵抗だった。

深沢拓海からの罵倒の言葉が続いた。
ゆっくり丁寧に私の人格を否定してくれる。
聞いていると自分がどんなに底辺の人間なのか思い知らされる気がした。

幼少期もこうして根気強く私がいかに不出来かを説かれ続けた。
当時の洗脳と現在とが重なり気分が悪くなる。

吐き気を必死に我慢していたが、次々と異変が私を襲う。
めまいがしてきて立っているのがやっとだった。

しかし深沢拓海は私の異変に気付いてはおらず、許してくれる気配はない。

と、私の記憶はここでプッツリと途切れた。
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