チョコレートなんか大嫌いっ
『はー、スッキリしたなー』
『そうですね。久しぶりにハシャいじゃいました』
『おいおい、学生は元気にハシャぐのが仕事だろ』
『そうなんですか?』
『そうなの』
『はい。分かりました』
『素直でよろしい』

爽二さんはわしゃわしゃと私の頭を乱暴なようで優しく暖かい手で撫でてくれた。

『何かあった時は、がむしゃらに体を動かすんだ』
『え?』
『俺、兄貴が死んだときも全然受け入れられなくて』
『……』
『何かしてないと心臓が押し潰されそうで。でも柊や葵や蓮の方がずっと不安でどうしたらいいか分からなくて毎日泣いてたんだ。そんな3人を俺が不安を吹き飛ばしてやらなきゃっていつも思ってた』
『……』
『でも、色々考えれば考えるほど空回っちゃってあいつらに笑顔を取り戻してやれないんだ。』
『……』
『そんなときにここに来たんだ。みんなで何にも考えられないくらいがむしゃらに遊んだ。俺も大人げなくってアイツらに勝ちを譲らなくてな』
『ふふ』

ムキなっている爽二さんが想像できてなんだか微笑ましかった。

『それで気がついたらみんなで笑ってた。その時に気がついたんだ。普通でいいって』
『普通……』
『そう。アイツらが悲しいことを考えるヒマがないくらい、がむしゃらに遊んで、がむしゃらに食べて、がむしゃらに寝る。当たり前のことをがむしゃらにやるんだ』
『がむしゃらに…』
『誰かがなにかウジウジしてたらすぐにここに連れてきて休むヒマもないくらいがむしゃらに遊んでやるんだ』
『……』
『だから、真紀ちゃんもがむしゃらにまた遊ぼう』
『…はい!』

爽二さんは大人なんだか子供なんだか良く分からない。
私の胸のうちを見透かされているかのようで。
だからきっとこんな話をしてくれたんだ。
口には出さなかったけど、たぶん爽二さんは私の復讐には反対なんじゃないかな。
なんとなくそんな気がした。

家の前に着くと爽二さんが口の端をニッと無邪気に上げ

『それじゃあ、おやすみ!姫』
『もう!それいい加減にしてくださいっ!』

前言撤回。
この人はただの子供だ。
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