チョコレートなんか大嫌いっ
それからの事はあんまり覚えていない。
気がついたら家に着いていた。

他のことが一切考えられないくらい、私の頭の中は彼とのホロ苦い思い出でいっぱいになっていたのだ。

思いがけない再会で、すっかり忘れ去っていたはずの思い出が胸の奥をヒリヒリと痛め付ける。

いやだ
やめて
なんで

目からは止めどなく溢れる涙
頭が暑くて心が寒くて
なんにも分からない赤ん坊のように
ただひたすらに泣きじゃくった。

翌朝―――

いつの間にかそのまま眠ってしまっていたらしい。
少し思い返すといくらでも涙が流せそうだった。
しかし延々泣いているわけにもいかないので無理矢理涙を引っ込める。
考えることを停止したのだ。

もう一度厳重に思い出を胸の奥に鍵をかけてしまいこんだのだ。

泣き張らした顔はいつもよりブサイクで、鏡は私にいつでも残酷で。
顔を洗ったら泣き張らした顔を誤魔化すために眼鏡を掛けた。
そして早々に鏡から目をそらす。

元々、地味でデブな私は鏡が大嫌いだった。
だから鏡だらけの美容院もろくに行くことができず髪の毛もみんなのように整ってはいない。
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