狼先輩と私の秘密
やっぱり似てるんだよね。
ずっと、ずーっと好きだった『奏汰くん』に。
なんとなく感じる雰囲気から。
「もう、葵依聞いてる? あ、また例の彼のこと考えてるんじゃないの?」
「べ、別に考えてなんかないし…」
なんて言ってみるけど、私が考えてた前提で話は進む。
図星なんだけどね。
「でも似てるんでしょ? 名前も同じなんだっけ」
「そうだけど…、苗字が違うからあの人じゃないよ」
だから、別人なんだよ。この高校にいるわけないじゃん。
私が好きなのは『南 奏汰』であって、『赤西 奏汰』ではない。
それに、あんなに怖そうな顔してないもん。
もっと爽やかで優しかったもん。
って言っても、小学生の記憶だからちょっぴりあやふやなんだけど。
でもそう思わずにはいられない。