私-前編-
強vs弱
「なんでほっといてくれへんの?!」
ナツが怒りで声を震わせながら言った。
「お前そんな言い方…」
アキはナツに怒鳴る勢いだ。
『アキ!いいねん…
ナツ…ごめん……』
アキがナツに言う前に私はナツに頭を下げ、それを阻止した。
するとナツは涙を流しながら話し出した。
「…なんで忘れさしてくれへんの…
記憶ないフリしてたら…
誰もあの事には触れてこうへんし…
このままケン君もうちに関わらんでいいし…
…それやのに…」
パチンッッ―…
あっ…
思わずやってしまった…―
ナツは左の頬に手をあてていた。
『ナツは確かに一番辛いかもしらん。
けど、あたしらだって兄ちゃんだって辛いねんで!!
でも…現実を受けとめて前に進もうとしてんのに、ナツは何なん!?
ただ逃げてるだけやん!!』
あぁ…
言ってしまった…―
ナツは何も言わず去って行った―…