私-前編-
兄の部屋の前で立っていると、兄が言った

「そんなとこにつっ立ってんと入れや」


『あ…うん。』

私は返事をすると兄の部屋へ入った。





わけわからないんだけど…


ナツと兄は、そんな私の気持ちなど知ってか知らずか何事もなかったかのように仲良しだった。



『えっ……ってか…』


私はわけわからないまま二人に向かって話したが、何から話せば良いかわからなかった。



「亜美…今までほんまごめん」


ナツが言うと、今までの事を話し出した…――





赤ちゃんをどうしても産みたかった事。


だけど、誰の子かもわからないのに、兄と一緒には育てれない。

兄に言えば兄は絶対一緒に育てようと言うと思い、どうする事もできずに、赤ちゃんと一緒に死のうと考えた事。


でも赤ちゃんだけいなくなって自分が生きてた事で、たまらなくなって、すべてを忘れる為に記憶のないフリをした事。


そして…


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