学園ディストピア
彼の言いたいことは俺には伝わらなかったようで、言い直された。


「いや、なにしてんの?」


それは、早くここから立ち去れということかと思ったが、そうではなく純粋に聞いてるのだと直感した。


「あ、と、新入生歓迎会のゲームで隠れてるんです。」


那珂は暫く俺と目を合わせたまま考えているのか何も言わない。


ヤバいな、この人の目、チョー怖いんですけど。


そして、気まずい。


やっぱり、苦手だなぁ。
基本的に得意な人なんていないけど、この人は特別苦手だ。



「ふうん」



返事それだけなら、普通にかえせよ!と心のなかだけでツッコミをいれておく。



すっと那珂は立ち上がると、座り込む俺の横まで来てしゃがみこんだ。



「あの、」

なんでしょうか?



すっと俺の腕を捕まれる。思ったより温かい。

フッと那珂さんが目を細める。それが笑ったということに理解するのに5秒かかった。



「あの」



これはなんですか?

そして、先輩の一言・・・



「つかまえた」

・・・・は?





さらに追い討ちをかける一言。


「猫」

「猫ってなんすか。」

「猫飼いたいんだけど、ここペット禁止だって」


まさかと思いますけど、

「猫になれと?」




拝啓、天国のお父さんお母さん、

俺はペットになったようです。

この那珂という男の。

何てことだ。


今すぐ地面に両手ついて例のポーズとりたいぐらい。




この生徒会の催し物、鬼ごっこは例年のイベントらしく那珂も内容を知っていたらしい。上級生が新入生を捕まえられればバツゲームが出来るという。


なんたる失態。

絶対こいつはこんなことに興味無いと思ってたのにちくしょー。



「それで、なにをすればいいんですか?」


聞くと那珂は首をかしげていった。

「ニャン」




・・・にゃん?



この人、今にゃんて言いました?



それを俺に言えと、


こいつ、

「何をすればいいにゃん」



こいつ、

絶対面白がってるだけだろ。


「お手」

「はい」

思わず反射的に手を乗せる。




・・・なにこれ。

もう一回言う、なにこれー!?

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