学園ディストピア
捕まったので俺は大人しく那珂についていく。そろろろイベントが終わるからなんだろうな。


どこいくんだ、とか聞きたいけど聞けない。この人に言いにくい。




どんどんと学校の方へ向かっているのは分かる。

那珂さんいてよかった。絶対迷子になってた。

学校の壁が見えてきた所で近くの茂みから物音がした。


1人ではなく数人の気配がする。

なんとなしにその方向を見ると、1人の新入生が上級生たちに押さえ込まれていた。



あの、いきなりそういう現場に遭遇するとかないですよね。

那珂も気付いたのか立ち止まり同じ方向を見る。





「や、やめっ・・・・ひっ、んぐ、いやっ」




ヤバいものを見てしまった。トラウマになりそう。見なきゃ良かったという後悔しかない。

新入生の子は両手両足を押さえ込まれ、口まで塞がれている。

これが若山先輩のいってたこの学園の危険性か。

新入生の子は同意の上でというわけでも無さそうだ。那珂は全く興味もないのか歩いていこうとする。



だけど、俺のほんのちょっとの良心が痛むわけで。助けるという頭は無い。

俺がボコられるのが関の山。
そういうのは勘弁。


「やぁっ!!!」


無理やり制服を脱がされている新入生は、抵抗するものの震えていて力が入っていない。



うわあ、

吐きそう 。

こんなものを見ていたら。



気分が悪くなる。気持ち悪い上級生の目、気持ち悪い下級生の声。


ほんとに、ヘドが出そう。ドブに頭を突っ込んだ気分だ。




「その手を離せっ!」


突然声が聞こえてきて、俺だけでなく上級生たちも動きを止めて声の主の方を見る。

え、誰?

よくいるような黒髪と眼鏡の少年だ。

だけどその声雰囲気があまりにちぐはぐな印象を受ける。
変装でもしているのだろうか。


小さいのに勇気のあるやつだな、と思った。身長は関係ないか。


那珂は動かない俺に気づいて横まで戻ってきていた。そして、俺と同じように事件現場に目を向ける。



正義のヒーローな地味眼鏡ちびっこが言った。

「そいつ、いやがってんじゃん!」

生意気な下級生の登場に上級生がイラつくのが分かる。


「おい、生意気な1年だな。」
「こいつも一緒にヤっちゃう?」


強気な1年もさすがに怯む。

上級生は乱入者の腕をつかんで両脇から地面に押さえつけた。


「やめろっ!ふざけんなっ、おまえら馬鹿じゃねぇの?」


抵抗はしてるが、この上級生もただ者ではない。例の体育会系だろうか。5人ほどかと思ったら、まだいたのか。


流石に被害者が増えて・・・これは生徒会とか先生とかに連絡いれた方がよさそうだ。


俺は校舎の方へ歩き始めた。その足音が聞こえたらしい。


上級生たちは全員こちらを見た。
最悪。


「おい、見られたぞ」
「あいつも捕まえろ」


は、ふざけんなよ。


俺は殴られるのとか勘弁だし。

上級生の1人 の腕が延びる、



殴られる。




と思ったが、いつまでたっても衝撃はない。

代わりに那珂が上級生を殴り飛ばしていた。



「は?ケンカ、したいの?」


嘲るような笑みを浮かべた那珂さん。

それにキレた仲間たちが那珂を囲む。

那珂本人は屁でもないような顔で、ゆらゆらと身を翻した。
< 11 / 34 >

この作品をシェア

pagetop