学園ディストピア
「ああ、しりたいぞ!」

春日旭てなんかすごいな。空気読まないというか、怖いもの知らずというか。那珂も名前言うまで解放されなさそうだと思ったらしい。

「那珂」

「下の名前は?」

「那珂国弘、あ、呼んだら殺す」

「そっか、ありがとな!」

春日旭、ちゃんと聞いて下さいね。
呼んだら殺すと言ってますよこの那珂さん。

この子耳悪いのかしら。

那珂が歩き始めたので俺も後に続く。

春日旭の目には那珂しか映ってなかったのだろう。ちょっとだけ、ムカつく。

「那珂さん、どこいくの?」

体育館に向かっているわけでもなく、那珂は校舎の中に入ってもどんどん歩いてく。

ついてっていーんだよね、と確認のために聞く。

名前呼んで殺されたらどーしようかと思ったけど、普通に答えは戻ってきた。

「みんな、いるとこ」

みんな?

みんなって誰よ。

つれられて入ったのは「理科準備室」。

那珂は躊躇わずに横引きのドアを開けた。



ッゲフ

煙草の臭いが充満するそこは、

不良たちのたまり場でした。


あー、詰んだ。俺かつあげでもされんのか。お金ないよ。



「よぉ、那珂ー、どこいってたんだ?新歓とかだりぃのに参加か?」

声をかけてきた金髪を見る那珂。

「いや、昼寝してたらちょいゴタッた」

それに普通に答える。

「那珂さーん、こいつだれ?」

赤い髪の小柄な男が俺に走りよってきて言う。髪の毛はざんばらにはねて、耳にはピアスがびっしり並んでいる。

こええええ。

「雨宮」

那珂が簡潔に答える。
あ、この人俺の名前覚えてたんだ。ちょっと驚き。

金髪や赤髪たちは呆れたようなため息をついて、スキンヘッドは頬をひきつらせた。

「名前きーてんじゃねーよ。そいつ、なに?」

那珂は俺をちらりと見てから、また言った。

「同室者だけど?」

まあ、それだけなんで、帰ってもいいですか?ほんとに俺ここについてきてよかったの?

本当に居場所のない感じがして、早くここからさりたくて仕方がない。

「いやいやいや、パシりとか?」

金髪が言う。
パシりというか、ペットですかね?


「別によくね?なんでも・・・」

受け答えに疲れ始めた那珂が机に腰を乗せる。
目で横 に座れと指示され、恐る恐る側までいく。

すげー、居心地悪い。



「いや、だって、お前が誰か連れてんのありえなくね?まじ、ねーから」

ゲラゲラ笑いながら言う金髪。他の数人はなにも言えないでいる。


見た感じのヒエラルキーはこの金髪か那珂がトップ、もしくは同列で、他の人たちは下と言う感じか。



「は、よくね?俺が誰つれてよーが。」

那珂がいらっとしているのに俺や他のヤンキーたちがビビってるのに対して金髪は動じない。
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