学園ディストピア
「金剛は那珂さんのこと知ってるの?」





担任のどじっ子遠藤先生のショートホームルームも終わり、寮に帰る生徒たち。



俺は鞄を持って金剛の前の席に座った。

あの那珂の名前を聞いた反応の理由を知りたかったからだ。

さっきは中途半端なところで会話が中断されてしまった。少しだけ気になってもいた。


「そりゃもう、悪い意味でね。それにしてもよくぞ無事で」

「まあ、怖そうな人だけどさ」


本人より周りのオトモダチの方が怖かったけど。オッサンみたいな顔してるのばっかだし、剃り込みとかパンチパーマとか。



「まあ、一言で言えばヤバい人。よく暴れて問題起こしてる。つるんでる奴等もどうしようもないのばかりだし、特に新庄て金髪のやつは危ないから、かかわるなよ?」



ごめん

さっき自己紹介してきた。




「ふうん」


「で、その人になんてバツゲームさせられたの?」


「なんか、猫?」


「は?」

「いや、猫飼いたいらしい。」

「・・・ごめん、よく分からない。」


うん、俺もよく分からない。



「とにかく、悪い人じゃないよ。チャーハンおいしかったし」

「なんで、チャーハンなんかもらってんの?」

「同室だから、お腹すいてたから」

「餌付けか」


金剛はなんか意外だなと呟いている。


怖いけど、チャーハンおいしかったし、結果的に助けてもらったし

いいひとじゃん。


あ、チャーハンのお礼言ってないや。




「雨宮おまえ、只者じゃねーよ。」

「いや、俺ケンカとか激弱だし。」

そもそも、暴力と無縁に生きてるし。

「そんな感じ、だけどよく脅されたりしなかったな。」


むしろ、助かりましたが。


「まあ、俺にもよくわからん。何なんだろ那珂さん・・・」

本当に。







寮に戻って部屋の荷物を片付けていると5時前頃に那珂が帰ってきた。こっちは昼の新歓ゲームのこともあってビクビクだ。

だが、那珂さんはそんなこと無かったかのような普通の無表情で

開口一番、

「外、いくんだけど行く?」

「外ですか?」


おそらく校則違反だ、そもそもなんでこの人俺を誘ってくれてるんだろ。不思議だ。

ついてって、また怖い人らがいてもメンタル的にやばい。

考えているともう一度、那珂が言った。


「ラーメン食いに行くの、どうする」
「じゃ、行きます」



どうしよう、断る理由が思い付かなかった・・・。

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