学園ディストピア
昼に隠れた森を抜けて、なだらかな下り坂を下る。那珂の背中を追うようにして歩く。


やっぱりでかいなー。


街の裏通りが見えてきて、過ごし歩くと、小さなラーメン屋が見えてきた。テナントの一角だ。


那珂は迷うことなく入っていった。
俺も慌てて後を追う。

入るなりいい臭いが漂う。香ばしい餃子の焼ける匂いとごま油の匂い。

中はカウンターと座敷があって、座敷の奥のテーブルには昼に見たのとは違う不良たちがいた。


「那珂さんじゃないっすか、ども!」
「チースっ」

那珂は手を軽く挙げて答えるとカウンターの方へ座った。


ここらの不良たちに有名なんだな。とぼんやり思う。詰まる所、しょっちゅう外で遊んでいるんだろう。



「おー、国弘、学校のツレか?」

店の主であろう角刈りの男がニヤニヤしながらなかには声をかける。

那珂はあくまで単調に答える。


「べつに、それより醤油2人前、それと餃子も」

「醤油ラーメンと餃子2人前ね。毎度」


店主は奥で麺を振って水切りしている。


5分ほどで湯気が上がった器がカウンターの上に置かれた。


油も適度で、分厚いチャーシューといい見た目は申し分ない。ごくり、とよだれを飲み込んだ。

「いただきます」

麺を啜ると、やはり美味しい。

インスタントばかりだからこういう本物のラーメンはやはり違う。


艶々光る麺に、透き通るスープ。

餃子はちょっと焦げすぎだったけれど。おいしかった。

やはり、那珂は何も言わないし、俺も話しかけるなんて勇気はない。


まあ、無理に喋らなくていいのは助かるけれども。





「あ、お金」

「連れてきたの俺だからいーよ」


那珂はそう言うと、俺の分まで平然と出した。なんだか恥ずかしいな。





店を出ても俺の前を歩く那珂さん。


やっぱり謎過ぎる。
慌てて那珂の横まで追い付いて言う。




「あ、ありがとうございました。」



那珂からの返事はなかった。

だけど、お礼は言えたのでスッキリはした。


帰り道も、会話は無かったが今までほども息苦しくは無かった。










「おはよ」

「あ、おはよ、雨宮」

金剛に挨拶してから自分の席につく。

なんだか、近くの男子たちの話し声が不意に耳にはいった。



・・・それでさ、まじであったらしいよ、強姦未遂!
ーーーまじかよ!
マジマジ、あの副会長をオトした編入生が襲われたらしーぜ。
ーーー副会長、激おこなんじゃね?


強姦未遂て、那珂さんが殴り飛ばしたあの・・・しかないよね。

てか、副会長をオトした編入生てなんだ?

オトしたてどういうことだよ。



あの襲われてた子か?もしかして助けに入って一緒に襲われてたすっとこどっこい、眼鏡の煩い、黒もじゃの・・・名前忘れた。忘れたけど物凄く五月蝿いかんじの。



まあ、あいつはないな。

あいつだけは、ない。

いくらなんでも男におちる、というのもありえないし。あんな野暮ったければSARAにありえない。




「あーーーーーー!!」
< 16 / 34 >

この作品をシェア

pagetop