学園ディストピア
そりゃ、正直に報告したらヤバいじゃん。那珂さん人殴ってるし。

うん。適当に誤魔化そう。

「未遂だったわけだし、俺どこに報告したらいいか分かんなかったし。大体被害者が自分で言うでしょ?」

「そんなもの、言い訳に過ぎない。だいたい、恐怖で被害者は報告すらままならないだろう!」

怒られた。まあ、それもそうか。

「その被害者ピンピンしてるけど」

挙げ句那珂さんの居場所探ってるし。

「大体なんで、那珂さんの居場所なんて知りたいの?あんた」

俺はヒリヒリする左頬を撫でながら、すっとこどっこいを覗き込む。

するとこの男真っ赤になった。

「いゃ、お礼言いたい・・・し」

語尾が小さくなってる。

こいつ、那珂さんに惚れたの。

なにそれ、



気持ち悪い。



男が男を好きになる、ふざけんなよ。キモいんだよ。

男のくせに顔なんか赤面させて、もじもじしやがって。

さぶイボたったわ。

「話をそらさないでください!」

おっと、副会長吠えた。

「いや、ほら、俺は偶然その那珂さんと一緒にいただけで、偶然こいつらが襲われてる現場に居合わせただけ。おわかり?」

それともおかわり?

「ふざけないでください!」

いや、ふざけてん のはお前の頭だよ副会長。この男も頭に血がのぼっているのだろう。

やばい、めんどくさくなってきた。

「はあ」

ため息をついて二人の間を抜けると、またモーセの十戒のように人混みが割れた。

俺にもこの現象が!
副会長が俺の肩を掴む。

「どこに行くんです!逃げる気ですか?」

ほんと、こいつイラつく。氏ねばいいのに。俺は振りかえって言った。

「保健室だけど?」

こっちも大人じゃない。勘違いだとしてもこの態度は腹が立つ。

思わぬ冷たい声が出ていた。





廊下に出ると金剛が追いかけてきた。

「おい、大丈夫?」

「全然」

というと金剛は苦笑いしていた。

「何があったんだ?」

「俺が聞きたい」


金剛には保健室に案内してもらいながら、俺の昨日おこった出来事一部始終語って聞かせた。

俺が那珂さんと同室になり、ゲームでつかまり、胸くそ悪い事件現場に居合わせ、今朝に至ったことを。


「災難だったね、生徒会に目をつけられたら終わりだ」

もう、終わったよ。

高校生活一発目からこんな仕打ち。

俺もう泣きそう。

副会長にたてついたし(殴られたの俺だけど)、クラスメイトには嫌われるんだろうな。

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