学園ディストピア
「それで、どうして桜沢くんが雨宮を殴ったのか分からないね」

「恐らく、ですが、桜沢さんはその旭を襲おうとしたのが俺と那珂さんだと思ったんじゃないですか?」

「なるほど、状況は分かった。それで犯人ともう1人の被害者は誰か分かるかな?」

「すみません。知らない顔だったので全然」


本当に印象にのこっていない。ということはあの被害者新入生は被害届を出していないのか。




「でも、」


でも?


「那珂国弘とあまり関わらない方がいいと僕は思う。」

「悪い人ではないですが」

「それは態度だよ。君へのね。」

「?」

「とにかく、こういう言い方はあまりよくないんだけど。君まで同類だとみられてしまうよ。例えそうでなくても、僕のような新米教師には聞く耳を持ってくれないから」

「はあ」

察するにこの先生にだって色々とあるのだろう。立場とか。

「どう、思われても大丈夫です」

どう思われようが、まだ俺はこの学校で1人だ。仲のよい友達がいるわけでもないし、知り合いさえいない。

そんな所で嫌われたところで、なんでもない。

これは少し自虐的かもしれない。環境が変わってちょっとウツなのかも。

「悪く思われるだけでは済まな いんだよ」

なんとなく分かった。

ここはそういう世界なんだ。

社会の裏側を覗き見したような嫌な感じだ。綺麗事だけでは生きていけないのは当然でたったそれだけのことで気分が落ち込む自分に嫌気がさした。

ここは狭い世界だ。

だけど、俺にはこの世界しか無いような気さえする。

これは嫌悪を持つべき部分でない。


「先生、それでも、きっとどちらも、選べないと思うんですよ。」

那珂さんは好きでも嫌いでもない。

現在の俺の印象では、怖そうな変な同室者。

だから、つるむつるまない、じゃない。


「那珂さんとはなんにもないですから」


言ってから寂しい気もした。当然だ、というのが殆どを占めていて、例え俺が那珂さんに好感を持ちはじめていたとしても、彼は俺のことなど暇潰しのような存在としてしか思っていないだろう。

なんでもないんだ。


「雨宮、それは・・・」

だって、誰も知らないここで、たった1人で、

それが気まぐれだとしても、

優しくされれば、イイ人だと思っちゃうでしょ?

多分、ここじゃなくても俺の居場所はない。

だから、少しだとしても俺に居場所を示してくれる存在がいると安心してしまうものでしょう。
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